妖怪「野寺坊」が住むお寺。

まつざきひろし

2015年02月02日 12:01



田無北部に隣接する埼玉県新座市には野寺という地名がある。

この地には寺の鐘を盗もうとした男たちが旅人に見つかりそうになり、鐘を寺の近くの池に落として逃げ去ったという民話が残っているそうだ。

寺とは新座市野寺2-15-17に現存する真言宗智山派の満行寺のことで、著名な歌人が詩に詠むほどの名刹である。




「武蔵野の野寺の鐘の声聞けば遠近人(おちこちびと)ぞ道いそぐらん」 藤原業平

「はるばると思いてもやれ武蔵野の ほりがねの井に 野寺あるてふ」 紀 貫之


ぼろの衣を着て廃寺に住むという妖怪「野寺坊」誕生の寺とされ、妖怪マニアの間では超人気なのだという。

写真の野寺坊は江戸時代の妖怪絵師鳥山石燕の創作妖怪だとも言われるが、実はこの野寺 正式名=満行寺にまつわる伝説「野寺の鐘」にそも

そものルーツがあるというのが現在最も有力な説だそうな。

寺の南西には野寺園という釣堀が最近まであった。

古絵図をみると釣堀のあった位置に鐘ガ淵と呼ばれた湧水池がある。今は暗渠となった中沢用水の水源池でもあった。

この池こそ盗人が鐘をボチャン!と落としたという池のことだ。

ということは鐘が今でも釣堀の底に埋まっているということなのか。さ、どうする!

この伝説と妖怪「野寺坊」がどう結びつくのかは今一つ分らないのだが、古絵図を見る限り江戸時代には妖怪が現れても不思議でない淋しい武蔵野

の原風景だったことが分る。満行寺の南にはこれまた由緒ある武野神社(たけしのじんじゃ)がある。

ここには霊験あらたかな湧き水があるが、最近は枯れることが多いという。霊験も周辺の都市化には敵わないのであった。ざ、残念。 

満行寺
〒352-0034 埼玉県新座市野寺2丁目15−17



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